馬がくれる心の静けさ

馬とふれあうと、心がすっきりします。
馬と接した日の帰り道、心が軽くなっている自分に毎回驚きます。
まさに、ホースセラピー。

どうしてこんなに馬と一緒にいるとすっきりするのだろう。
犬や猫や人間と一緒にいるときとは全く違う質が馬からはもたらされる。
それはなぜ?

写真AC

考えてみて思い当たることは一つ。
それは、馬は「おびえる生き物」だから。

馬は食物連鎖の底辺に位置する草食動物です。
いつも周りを見渡して、自分を食べようとする生き物がいないか警戒します。びくびくして少しでも危険を察知したらすぐに走りだす。闘う生き物ではなく、逃げる生き物です。

なので、馬に「この人怖い、やばい」と思われたら逃げられます。
初手「おびえてびくびく」なので、「あなたに危害を加える気はないですよ」と信頼してもらう必要があります。

つまり、犬や猫や人間なら許容してくれるようなテンションを、馬は受け入れることが難しいです。もちろん慣らして訓練していけば大きな音や動作も平気になりますが、それでも他の動物に比べて腹の据わらなさは段違い。

だって、捕食者に対して腹が据わっていたら簡単に食べられてしまいます。
少しでも危ないと思ったら逃げる。それが馬スタイル。

ダイエーの創業者の中内功さんは、フィリピンでの戦争体験をこう語りました。
「自分は臆病だったから生き残ったのだ。戦場では勇敢な人間から死んでいった」

馬もこの言葉に通ずるところがあるかもしれません。
臆病ですぐ逃げるからこそ生きのびられる場合もあるということですね。

そんな馬に対してどう接したらいいのか。
答えは「冷静」。
馬の側にいるときは、心を澄んだ湖のようにして、平常心でたたずむこと。

だからなんです。
馬と一緒にいてすっきりするのは。
強制的に自分をプレゼンスの状態に持っていき、それを意識的に長時間続けるのだから、そりゃあ意識は休まります。

馬と接することは、こちらの記事で書いた「デジタルよりリアルが大事」というテーマとも、実はつながっています。

生きている馬と接するのは、バーチャルではなくリアルな行為。これからの時代に、こうやって五感を動かすことはより大切になってきます。

馬に乗らなくても、観光牧場で馬を眺めるだけでも心は鎮まります。

放牧地で牡馬たちはじゃれあったり喧嘩したり結構うるさいです。
それも静かに眺めていると、生命力としてすっと心に入ってきます。時折静かに側に来る馬もいます。なぜか馬っ気を出してスティックが伸びていたりするのですが……(牝馬の匂いがついていたかしら?)

馬は非常に繊細で人の心も敏感に感じ取ると言われます。ミラーニューロンが発達している生き物なので、仲間の行動を真似ることもします。

怒ってて怖そうな人のところには危険を感じるので基本あまり寄って行こうとしません。
馬に好かれたいなら、心を静かに。
自分の機嫌は自分で取る。

心を静かにしていると、すっきりする。
馬と一緒にいて心がすっきりするのはそういう理由のようです。

さて、放牧地の馬を眺めていて非常に面白いのが、人間関係ならぬ馬関係の様相。

馬は縦社会の動物です。
かならず序列、ヒエラルキーを作ります。
序列がない群れは闘争に満ちて不安定になります。

ホッブズのリヴァイアサンですね。
平等で対等である状態は万人による万人の闘争を引き起こします。
陰と陽に分かれる二元性の世界では、序列があってこそ安定がもたらされるのです。

馬を見ていても感じます。
群れ(組織)が安心して生活するためにはヒエラルキーこそが必要なのだと。

下のHorsy Coffee Houseの動画では、牝馬(メス馬)の序列の様子が語られています。

これが、もう、まさにわかるわかるで共感の嵐。
学校内のスクールカーストもそうだし、職場の女子関係もそうだし、ママ友関係だってそうでしょう。

アイムフィアレスちゃん、今どこに……

いつだって結局 “All the girls are girling girling”。
牝馬だってgirling girling。
女子あるある。

(動画:イケメンにむらがる女子牝馬たち)
「キャー!クワイトファインさんよー!」
「今日もビジュが良い!」
「顔が良すぎてしんどい……」

画像元:今年の繁殖牝馬群の序列は複雑です – YouTube

この序列トップの新入りカイアワセですが、若くて経験が未熟ゆえに上手くリーダーシップを発揮できません。なので、経験豊かなブラックバカラに頼るようになります。これで群れの中が安定しました。

人間社会でも見られるケースでは。
新卒高学歴有能人材Aさんがその鋭い才能ゆえに経営陣より期待されて「あなたが指揮を取れ」とチームに加えられても、大抵は新入り(≒チームに馴染んでいない人)の話にメンバーが耳を傾けることは少ないです。
ですが、そこで長年チームにいた信頼の厚いチーフと仲良くなり、チーフが「Aさんのアイデアは素晴らしいから参考にしていきましょう」と口添えしただけで、メンバーが一気にAさんの指示をきくようになります。

序列最下位のアドアードは、上位でベテランのブラックバカラに気に入られます。そうすると、仲良しブラックバカラと一緒にいるだけで一気に群れでの序列が上がるのです。

嗚呼、仲良きことは美しき哉。
美しいだけではなく居場所まで手に入る。
誰かと仲良くできることは、パワーなのですね。

組織の中で信頼が厚い人物と関係構築するのは、大切なこと。馬社会を見てもそのことが学べます。そのためには、組織に入ったその日(できれば1時間以内)にそのグループの人間関係、序列を読み取る能力が重要になってきます。

誰が群れの中心なのかを(文字通り)かぎ分けることが大切。そしてその人が好くタイプがどんな人間かを掌握する。そしてできれば自分もそうふるまう。そうすれば快適な群れライフが約束されます。毎日が楽しくハッピーに暮らせます。

コミュ力お化けが無意識にやっている行為とは、こういうこと。
ぜひ見習いたいですね。
見事なコミュニケーション。素敵です。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
素敵なあなたに愛と光があふれますように。